2023-08

エッセイ

夏の終

15日を過ぎると今年の夏ももう終わりだ。9月は暑いし、へたをすれば10月でも暑い年はあるが、10月がいくら暑くても、まだ夏が続いているとは誰も思わない。 本当に夏らしいのは、夏を強く意識するのは8月である。 それでも15日を過ぎたら終了だ。...
エッセイ

戦争を知らない子どもたちのひとりでした

Kからラインでメッセージがとどく。「先週末、カミさんと甥っ子がいる鹿児島に行ってきた。行きたかった知覧へ。色々考えさせられたわ」 意外だった。 知覧という地名を見て、そのうえ行きたかったとある。考えさせられたで終わるのは、神風特攻隊の史跡を...
エッセイ

知らないうちに取ってくれ

タバコを止めて8年になる。初孫の誕生がきっかけになった。もともと尻からケムリを出すほど好きだったわけではないので、苦しむことなくすんなり止められた。大学生のときに吸い始めたから40年近く吸っていたが、酒はもっと早くから飲んでいた。 小学校高...
小説

虚空 1(プロローグ)

声がする。 ときには叫びがまざる。男が誰かを呼んでいるようにも聞こえた。 声の底には怨みを感じ、とても気味が悪い。 ユーチューブ動画の話をしている。タイトルは『事故物件住んでみた』である。YamaQと名のる人物のブログ系チャンネルである。以...
エッセイ

独り

肝の小さい、根性のまったくない男である。 危険のあるような場所には近づかないし、恐ろしいものがいるかもしれない所には、決して足を踏み入れない。虫、動物、怖い人、オバケ幽霊、みんな会いたくない。 ただ家にいるだけで私は、充分満ち足りている。 ...
エッセイ

偏旁冠脚

知らない。 少なくとも現在の記憶のなかには、まったく存在していない。 学習していないと思っている。習ってない、教えてもらっていない。 つまり人のせいにしているわけだ。  漢字の話である。 つきへんとにくづきは知っている。にくづきは体の器官な...
エッセイ

潮の香のかすかにからむ青田風

古いUSBメモリーを開く。 仕事で作成した書類のフォルダーがたくさん残っている。それらに紛れて、個人的な文書を記録したものもあった。先日公開した短編小説『井戸』は、ここで見つけたものだ。私はすっかり忘れていた。存在も書いたことも。 同じよう...
小説

井戸

「ひぃやぁー」妻の久代が叫んだ。「どないしたんや」 幸一は運転席のドアを開けたまま慌てて駆け寄る。「えっ。水に落ちたような……」 言いながら久代は、恐ろしいものでも見たような顔をしている。血の気がない。 幸一はしゃがんで妻の足を見たが、まっ...
エッセイ

自業自得

妻と共通の友人の母親の通夜に行く。最後の別れに顔を拝見した。穏やかな表情だ。 ご遺体は2段ほど上がった先に安置されていたが、私は階段を下りるのが苦手だ。思わず妻の手をとった。お気をつけてと声をかけてくれた友人の長男に対して、妻は応える。「こ...
はじめに

表記について

横書きで書いているが、ものによっては縦書きのままのものもある。 もちろんここに載るのは横書きだから、それに見合った体裁に変えるべきなのだが、最初のころはよくわからなかったので、縦書きのまま放置しているものがあるのだ。 全文削除して書き直すの...