知らないうちに取ってくれ

エッセイ

 タバコを止めて8年になる。初孫の誕生がきっかけになった。もともと尻からケムリを出すほど好きだったわけではないので、苦しむことなくすんなり止められた。大学生のときに吸い始めたから40年近く吸っていたが、酒はもっと早くから飲んでいた。

 小学校高学年のころ盗み酒の記憶がある。サクラのリキュールだった。カクテルのサクラフィズのベースになる酒で、桃色の陶器のボトルに入っている。とても甘く美味い。

 中学生になり自宅で親しい同級生とマージャンをして遊び、ウィスキーの水割りを飲んだ。もちろん大量ではない。ほんの少し、グラスに5分の1とか6分の1とか。

 しかし、マージャンとウィスキーという単語からは、素行不良という言葉が自然に浮かぶ。行為そのものは不良のすることかもしれない。だが当人たちには悪事をはたらいているという意識はまるでない。ただ純粋にゲームを楽しみ、余興として嗜んだだけである。

 マージャンに金銭の授受はなく、喫煙は誰ひとりまったくしなかったのが、真面目な生徒を自負していた私たちの矜持だろう。(おかしいし勝手な理屈だ)

 恐喝や喫煙など不良の必須アイテムには縁もゆかりもなかった。

 高校生のときはジンライムに凝ったが、やはり量は多くなく酔うほども飲まない。

 RCサクセッションの唄う『雨上がりの夜空に』は知らなかった。曲中『ジンライムのようなお月さま』のフレーズは、今でもお洒落に聴こえる。

 今気づいたが、これらは身銭を切った飲酒ではなかったな。たいてい盗み酒だ。

 大学浪人をしているときは、ほぼ1年間禁酒した。浪人が決まったときに禁酒すると宣言した。当然未成年者なのでアルコール摂取は法律で禁止されている。今考えるとこれも、ちょっと変な話だ。両親が真剣に受け止めていたのも何だかおかしい。飲酒を咎められたことがないのは、最も不思議だな。

 大学入学と同時に飲酒はすぐ再開した。私は12月生まれなので、まだ未成年なのは変わらない。しかし、抑圧状態からの解放には逆らえない。

 同級生には現役合格の学生は多かったが、1年遅れや2年遅れの者もいる。タバコを吸おうが酒を飲もうが、誰も確認しないし気にもしない。

 ただヘビースモーカーや大酒飲みは、からかい半分に隠れた高額納税者と呼んだ。知らないところで、納税している。

 実際は大した額にはならないと思うが、本当のところどうだろう。今はタバコも酒もかなり値上がりしているし、もともと税率は高いはずだし……。

 ここで財務省のホームページにはいる。まずタバコからだ。

 しかし、頭にきちんと入ってくれない。表が掲載されていて一目瞭然のはずだが、タバコが千本単位で扱われていたり、価格に対する税額が100分の1の単位まで出ていたり、かえってわかりにくい。

 自分なりにバッサリ簡略化してみよう。

 小売定価20本入り580円の一般的なタバコについて見る。消費税額は52円となっている。これに課税される国税のたばこ税136円とたばこ特別税16円、そして地方税の道府県たばこ税21円と市町村たばこ税131円の、合計356円となる。

 簡単にしたつもりだが、税金の種類が複雑すぎる。わかりにくい。ただ定価の6割は税金であるということは理解できた。

 なぜかマンモスを解体している、はじめ人間ギャートルズのイメージが浮かぶ。健康を度外視して前向きに捉えると、ケムリでさえ役に立っていると言えそうだ。

 しかし、タバコは止められて良かったと、心から思う。普通に勿体ないと感じている。

 止める気配もそぶりもない酒について、同じく財務省ホームページ。

 表はあるがもっと複雑だ。

 酒は種類も多く、アルコール度数もさまざまな上、その度数に対する課税なので項目も必然的に増えてしまう。

 とりあえず発泡酒350ミリリットル入り、度数5・5パーセントを見る。代表的な小売価格168円について、酒税額46円と消費税額15円の合計61円が課税されている。小売価格の37パーセントが税金だ。

 私はあまり飲まないビールは、酒税等の負担率が一番高く、47パーセントを越えている。世間では一番飲まれているのだろう。

 表には9品目掲載されているが、もう触れない。働いていない私が、何らかの形で納税できているのだから、結構なことである。タバコは止めたが。

 じっくり考えれば二重課税になっているようにも思うが、支払の段階で徴収されているのは気が楽だ。内税方式ならきっともっと気にならない。上手に騙してほしい。

 ついでに国の税収の内訳を見てみると、2022年度会計で、たばこ税は9000億円、酒税は1兆1000億円だ。意外にタバコの税収は多い気がする。逆に酒は少ない。

 産業として見ると、タバコは栽培製造販売のすべてを、JTが1社で独占していることになるかな。もともと専売公社だったのだから、文句は一切ない。

 喫煙しない人或いはケムリを嫌がる人は、増えているように思う。身近な友人でも喫煙者は1人しかいない。彼は会社でも唯一、生き残った喫煙者である。絶滅危惧種。

 喫煙者が減っているのに税収が減らないのであれば、単価が高いと考えるのは普通だろう。高すぎるから安くしろと言っているわけではない。むしろ逆で、取れるところからドンドン取れば良い。高くて結構。

 健康を害そうが命をなくそうが、好きなものは止められない。本人がデメリットを承知なら止める必要はない。

 それが成熟した社会のオトナだろう。もちろんケムリだけではない。〇〇〇〇水も同じである。

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