さよなら10円玉

エッセイ

 昼間は駄菓子屋の店番をしている。客のほとんどは小学生である。保育所も近くにあるので、母親に連れられて幼児も訪れる。嬉しそうに菓子を選んでいる。幼くても買い物は楽しいようだ。

 ウチには高額商品は置いていない。ひとつ10円から高くても120円くらいまでの菓子である。まさに駄菓子だ。

 もともと内税あつかいにして、定価10円なら10円玉ひとつだけ、50円なら50円玉ひとつだけで買い物ができるように価格設定している。よけいな釣銭や税による不足が発生しないよう、表示価格と持っているお金がひと目で合致し、すっきりわかるように気をつけている。

 しかし最近、菓子メーカーも値上げするところが増え、定価10円で売れる商品が少なくなっている。最低12円の定価をつけざるをえなくなって来た。駄菓子は金がさが張らないから、利はうすい。利益に拘らないのは、商売としてあり得ないので、頭を悩ますところである。

 計算もとてもややこしい。

 必然的に1円玉や5円玉を多量に準備する必要が生じている。とてもめんどくさい。

 これまで客に「ペイペイやってますか?」と尋ねられたことが3度ほどある。もちろんウチはやってない。こんな利のうすい商売に設備投資はできない。

 子どもたちにしろ、手持ちのお金と相談しながら菓子をあれこれ選ぶのが楽しいのである。握りこんだ10円玉や100円玉がより愛おしくなる。

 キャッシュレスがこれからの世界では当たり前だろう。小銭はどんどん駆逐される。

 悪貨は良貨を駆逐するとは習ったが、貨幣そのものがなくなろうとしている。

 小銭を使うといえば賽銭に思いあたる。どうするのか。どうなるのだろうか。他人事ながら少し気になる。

 そもそも賽銭とは、本当はどういう性格の金銭なのだろうか。

 ネットで調べる。といってもウィキペディアを見るだけだが……。

 賽銭とは、祈願成就のお礼として神や仏に奉納する金銭のこと。元は金銭ではなく幣帛(へいはく)・米などを供えた。

(幣帛の読みは私が書いた、読めなかったので。もちろん意味もわからない)

 たまたま見たとはいえ、タイムリーな記述がある。

 大量の1円玉の賽銭を銀行などに入金すると、入金手数料の方が賽銭より高額になる事態が生じる場合があるようだ。

 それでウィキペディアによると、2022年頃から、神主が主に商店等の事業者向けに金融機関を介さず無手数料で賽銭を利用した両替サービス(その利用者は紙幣等を出し、釣銭用等として棒金の形で硬貨を受け取る)を行うケースが各地で相次いでいる、という。

 釣銭用の小銭を大量に用意しないといけないな。もっとも太客(?)限定の措置か。

 こうなると、賽銭をペイペイで支払うという行為ががぜん現実味を帯びてくる。むしろ神社仏閣側が大量の釣銭を用意するより、賽銭箱の代わりとしてご本尊の目の前に、ATMのような機械を設置し、オンラインで金銭のやり取りをした方が簡単に思えてくる。

 設備投資は半端ないだろう。もちろん機械を護るそれ相応の処置も必要になる。

 賽銭に定価はないから、利用者が額を決定しないといけない。これは面倒である。数字の打ち間違いも起こりそうだ。

 以前、賽銭代わりに、小切手や約束手形を賽銭箱に放り込んでいた。テレビで見た。数字を語呂合わせにして福を願う算段だ。今でこそありだな。

 小銭を使うと言い切ると、ちょっと違うかもしれない。例えばトレヴィの泉に硬貨を投入する行為は、どうだろう。またまたウィキペディアを見る。

 金銭を金銭として消費していると言えるのかなぁ。

 回収して再度使用しているようなので、賽銭と同じ扱いと考えても良さそうだ。

 それにしてもあれは、言い伝えやったんか。泉に背を向けてコインを1枚投げ入れるとローマへの再訪が叶うというのは。

 また、枚数により願いの種類も違うようだ。2枚投入すると大切な人と永遠に一緒にいることができるらしい。3枚は、恋人や夫・妻と別れられる。キリスト教が離婚を禁止していた名残りだそうだ。

 別れれば新しい出会いも訪れる。

 ところで、10円玉を作るには1枚あたりどれくらいの費用がかかるのだろうか。

 政府がキャッシュレス化を推進したいのは、貨幣がなくなれば、紙幣を印刷することも硬貨を鋳造することもなくなる。穿った見方をすれば国の経費を削減できる。

 現在、ウクライナ戦争のせいで原料費も高騰しているらしい。完全にキャッシュレスが実現すれば、すべて不要になる。

 さて10円玉を1枚作るのに、約12.9円かかるようだ。10円の価値しかないものを作るのに、約13円必要である。

 なお、1円玉、5円玉、10円玉の3種類の硬貨は、いずれも費用過多である。額面より高い費用がかかる。

 ネットにはすべての硬貨の1枚ごとの必要経費が出ているが、ここでは触れない。

 いくら費用がかかろうとも、私は純粋に必要な支出と思う。

 国のつとめだ。

 国民が現金を使うかぎり、国は札にしろ玉にしろ、作らなければならない。

 現ナマは人を狂わせる。

コメント

  1. kaz より:

    ほんとうに小銭使わなくなりましたね。セブンはナナコ使っている

  2. 銀二郎 より:

    kazさん、コメントありがとうございます。
    私もナナコをよく利用していましたが、駄菓子屋が5円玉危機に見舞われたとき、極力自分で収集する方向へ転換しました。

タイトルとURLをコピーしました